中国でテレビを見るとまずチャンネル数の多さに驚かされる。中国最大のテレビ局の中央テレビ(CCTV)は日本のNHKに相当する中国唯一の国家級のテレビ局だが、各地域でもそれぞれのテレビ局をもっている。06年末までに中国全土のテレビ局は約300近くに達している。最近、ケーブル放送と衛星放送の普及によって、一般家庭でも多い場合は100に近いチャンネルを受信できるようになった。


中国テレビ放送の変貌と現状


中国は最初のテレビ放送局、北京テレビ局(中国中央電視台の前身)を1958 年春に開設し、同年9 月2 日から放送を正式に始めた。

1980 年代に入り、改革・開放政策が推進されるにつれ、テレビ放送は大きな発展をとげた。

また、1980 年に30%だったテレビ放送の人口カバー率は、2001 年には94.2%に上昇した。

1980年代半ばからケーブルテレビが発展し、ケーブル局の数は1990年代末には1,300局、利用者世帯数は8,803 万世帯にまで膨らんだ。


1990 年代からの中国のメディア政策で特筆すべきは、商業化とそれに伴う競争原理の導入である。中国のテレビ局は収益の9割以上を広告収入に依存しており、中でも、最大の中央テレビ(CCTV)の広告収入は04年に80億元を超えるようになった。これだけの数のテレビ局があれば、競争の過激化も避けられない。中国はいま、テレビの大競争時代といっても過言ではない。従来、党による「指導」の側面が重視されていたが、徐々に「サービス」が重視されるようになった。こうした変化は具体的には娯楽番組の増加に見ることができる。言いかえると「送り手中心」から「送り手と受け手」双方を重視する政策に変わり、視聴率や受け手調査の結果が重視されるようになった。

各放送局が収入のほとんどを広告に依存し、視聴者を無視することはできなくなった。放送産業は従来の「大鍋飯モデル」(みんなで平等に成果を分け合う方
式)から「競争モデル」へと変化を遂げつつある。そこではテレビ局間に競争原理が導入され、一つの地域で複数の局が競争していることも珍しくない。



中央電視台(CCTV)とローカル局


中国のテレビ局は、大まかに@中央政府、A省政府(直轄市、自治区を含む)、B市政府C県のうち、いずれかの行政府に属している。
@は国レベルの中央電視台CCTV、
Aは31の省レベルのテレビ局(北京電視台や上海電視台など)
Bは市レベルのテレビ局、
Cは市の下の行政単位である県などのテレビ局である。県レベルのテレビ局は大規模な吸収・合併が繰り返され少なくなりつつある。市・県局の主な役割は、あくまで中央と省の番組の再送信であることが繰り返し強調されてきた。


  国レベルのテレビ局:中国中央電視台

中国で最も重要なテレビ局は中央電視台(CCTV)である。

中央電視台は、国内のほぼどこでも受信でき、現在、以下の 16 チャンネルがある。

@総合、A経済、B音楽・芸能、C華僑向け国際、Dスポーツ、E映画・文化、F青少年・軍事・農業、Gドラマ、H英語、Iニュース、J科学教育、K演劇、L社会・道徳・法律、M少年児童、N音楽、Oスペイン語・フランス語。


これ以外に国レベルのテレビ局としては、教育部(日本の文部科学省に相当)に直属する教育台(教育テレビ)がある。

この中に4つのチャンネルがある。

@総合教育、Aテレビ大学、B青少年向け、C試験的教科書による教育番組。


  省レベルのテレビ局:北京電視台

北京市にある北京電視台には10 チャンネルある。

@総合、A文芸、B科学、C映画、ドラマ、D経済、Eスポーツ、F生活、G青少年、H公共情報、Iアニメ。

3.多チャンネル化と番組タイプ

1992 年5 月4 日、北京有線テレビ放送局が誕生し、放送を正式に始めた。現在、北京ではどこの町内にもケーブルが通っており、多数のチャンネルを見ることができ、全国を網羅する中央電視台や教育台に加え、北京のローカル局である北京電視台、さらに全国各省・直轄都市のチャンネルも視聴可能だ。

中国のテレビ放送は、各地の送信所から電波を送り出す日本の地上波放送とは違い、衛星放送を各放送センターで受信し、サービスエリア内にケーブルを通して再送出する有線テレビ(ケーブルテレビ)方式となっている。通常、国内各地の衛星テレビ50 から80 チャンネルほどが視聴できる。テレビ機械を購入したら、まずチャンネルの自動捜索によって、ケーブルからの信号を読み取ってチャンネルを確定する。日本のようにテレビ局のチャンネルは固定していない。つまり、あちらで5 チャンネルとなっているテレビ局が、こちらでは10 チャンネルになっていたりする。またチャンネルが重複していたり(たとえば8 チャンネルと13 チャンネルが同じ内容のチャンネル)、信号が悪くて視聴が出来ないままチャンネルもあったりする。実際に視聴できるチャンネルは、信号の状況によって数も異なるが、30 から50 チャンネルほどだろう。

 北京で視聴できるテレビチャンネル

【中央電視台】
中央電視台1 総合チャンネル
中央電視台ニュースチャンネル
中央電視台2 経済チャンネル
中央電視台3 芸能チャンネル
【地方局】
上海東方衛視
天津電視台衛星
天津電視台1
天津電視台2
2 中央電視台は全国のケーブルテレビ局と連係して、衛星と地上中継ネットシステムからなる世界最大のテレビ放送ネットをつくっている。
3 31 の省レベル局の番組はすべて衛星に送られている。


中央電視台4 インターナショナルチャンネル
中央電視台5 スポーツチャンネル
中央電視台6 映画チャンネル
中央電視台7 児童・軍事・農業チャンネル
中央電視台8 ドラマチャンネル
中央電視台10 科学チャンネル
中央電視台11 京劇チャンネル
中央電視台12 西部チャンネル
中央電視台こどもチャンネル
中央電視台音楽チャンネル
【中国教育台】
中国教育台1
中国教育台3
【北京電視台】
北京電視台1
北京電視台2
北京電視台3 教育チャンネル
北京電視台4 ドラマチャンネル
北京電視台5 経済チャンネル
北京電視台6 スポーツチャンネル
北京電視台7 生活チャンネル
北京電視台8 こどもチャンネル
北京電視台9 公共チャンネル
重慶電視台衛星
河北電視台1
河北電視台2
廊坊電視台
山西電視台衛星
内蒙古電視台衛星
遼寧電視台衛星
吉林電視台衛星
黒龍江電視台衛星
江蘇電視台衛星
浙江電視台衛星
安徽電視台衛星
福健東南電視台衛星
江西電視台衛星
山東電視台衛星
河南電視台衛星
湖北電視台衛星
湖南電視台衛星
広東電視台衛星
旅遊衛視(海南島のチャンネル)
広西電視台衛星
四川電視台衛星
貴州電視台衛星
雲南電視台衛星
西蔵電視台衛星
陝西電視台衛星
甘粛電視台衛星
青海電視台衛星
寧夏電視台衛星
新彊電視台衛星




各チャンネルに特色があり、番組ジャンルも増えている。これは、中国のテレビ放送業が量的にも質的にも充実した力をもち、人口の最も多い国のテレビ文化の豊かさを示している。CCTV3 は俳優や歌手のトークショーが見物。オスカー受賞式の番組を放送したりもする。CCTV4 は全編英語での放送されている。外国人向けの中国語講座があって留学生たちの役に立つこともあるだろう。CCTV11 は中国ならではの京劇チャンネルだ。一日中様々な演目を放送している。観光客向けの劇場で見るよりこちらのほうが質の高いものを観ることができる。CCTV12 はまるごと西部(中国内陸部)の情報を提供するチャンネルだ。


中国のテレビドラマには、清朝などの皇帝が主人公の歴史モノ、ワイヤーアクションが乱れ飛ぶ武侠小説モノ、戦前の上流階級を舞台とした民国モノ、若者の葛藤を描いた現代モノ、警察や軍隊の活躍ぶりを描いた英雄モノなどがある。さらに若者の生活を描いた恋愛モノから熱血労働者モノ、刑事モノなどなかなか面白い。

日本のテレビドラマとは放送の仕方が違っていて、日本なら撮影を続けながら週に一度放送するのが常だが、中国ではまずドラマをすべて撮り終えた後、毎日1話から3 話ずつを2 週間ほど続けて一気に放送する。見逃さないよう、毎日同じ時間にテレビの前にいるのは少々つらいかもしれない。見る方も楽ではないが、中国人は続きが放映されるのを一週間も大人しく待ってなどいられない。

そして放送が終わる頃に別のテレビ局がまた放送し、同時にこのドラマのDVD やVCD(ビデオCD)が販売される。
地方の省のチャンネルは、その土地の雰囲気を北京にいながらにしても知ることができる。例えばチベットのチャンネルはチベット語、内蒙古ではモンゴル語のニュースがある。民族衣装を着たキャスターが現地の言葉で喋り、テロップも漢字ではなく現地の文字なのだ。